人が集まる市役所を目指すか、誰も来ない市役所を目指すか

現在、交野市で老朽化が進む市役所や青年の家などの公共施設の再配置に向けて議論が進んでいる。2017年3月には公共施設等総合管理計画を定め、2018年4月には臨時組織として公共施設等再配置準備室を立ち上げ、同年8月からは市民が参加して公共施設の再配置ワークショップを開催、現在まで2回開催されていて、私はいずれも傍聴した。かねてから、公共施設の再配置には市民参加のワークショップを開催し、広く意見を聞いてほしいとお願いしていただけに、関係各位と参加される市民のご努力に心から感謝する。

公共施設再配置のワークショップは、摂南大学の先生にファシリテーションしていただき、グループワークを通じて市民の公共施設再編の案を作っていく形式で進んでいる。先生のファシリテーションと市民の方には全く不満はないのだが、私が気になったのは、第1回で市の事務局が長々と公共施設等総合管理計画と、市が持っている再編の方向性を説明したこと、第2回でも市が目指す方向を説明したことである。これでは、せっかくのワークショップで市民の自由な意見が出るのを阻害する恐れがある。そして、市が指し示す方向は「防災拠点・地域活動拠点の形成を目指す」としており、現在の市役所本庁舎、別館、第二別館及び青年の家を集約した施設の新設を具体例で挙げている。

しかし、私は、市がイメージするような市民が集う集約施設の新設には全く賛成できない。理由は3つある。第一に、市民がそれを望んでいないこと。第二に、必要な施設の規模やスペックが誰にも想定できないこと。第三に、市の財政がそれを許さないことである。

人が集う市役所など市民は望まない

第一に、市民の多くは好き好んで市役所に行くわけではない。市民が集う市役所を目指すこと自体、市民感覚からずれている。考えてみてほしい、好き好んで市役所に行ったことがあるだろうか。市役所に行くのは年に何回だろうか。

住民票を取りに来たAさんは、そもそも住民票を提出する必要がなければいいのになぁと思っていたのではないだろうか。子供が生まれるやいなや保育所の申し込みに来たBさんは、スマートフォンで済めば楽だったになぁと思っていたかもしれない。なぜ今年は税金が高いのか聞きに来たCさんは、もしも納税通知書がわかりやすく納得できるものだったら、代わりに趣味に時間を使えてたかもしれない。私は、誰も来ない市役所こそ目指す市役所の姿と考えている。市民が行く必要がない、場所すらわからないけど行政に不満はない状態が、市民が望む市役所の姿ではないだろうか。

SUUMOなどの民間機関が行う「家の近くにあってよかった」アンケートでも、市役所があってよかったと答える人はまずいない。この種のアンケートでは、図書館と公園は上位に来るが、それ以外の公共施設が近くにあってよかった、近くに欲しいと答えている結果はまずない。普通の市民は、別に市役所に集いたいわけではない。行きたいわけでもない。これが、普通の市民感覚である。

市役所に勤めている職員が、「市役所こそ市の中心だ」と誤解してしまう理由はたぶんこうだ。まず、市役所職員になりたての頃は、市民と市役所の距離感を正確にわかっている。しかし、市役所に勤めているとその感覚が狂ってくる。窓口には毎日多くの市民が来る。そして、丁寧な応対やわかりやすい説明によって満足して帰っていくと「ああ、よかった。いい仕事ができた。市民にとって市役所は必要な存在で、まちの中心なのだ」と誤解していくのではないだろうか。私も市の職員だったので少しわかる。(もっとも、「市民が来る必要がないことが最善」と理解して行動している職員もいる。)

30年後に必要な市役所の規模が誰にもわからない

第二に、将来必要な市役所の規模など誰もわからない。現在の市職員の数は約500人程度だが、30年後これが何人になっているか誰もわからないのである。よって、新設する市役所の適切な規模が、誰にもわからない。

交野市だけでなく、全国のどの市も今後どうなるかわからない。例えば近隣市と合併し、交野市は「交野区」となるかもしれない。この場合、新しい区役所で必要な職員は100名ほどになるのかもしれない。また、別の将来では道州制が施行されて大阪府が廃止、大量の事務が市に移管されているかもしれない。この場合、新しい市役所では職員は800人必要になるかもしれない。

もっとありうるのは、ごみ収集や給食は民間へ、税金や国民健康保険は一部事務組合へ移管、水道・消防・危機管理は広域へ、人事給与はアウトソーシングといった具合に、総合行政を行う市から事務がバラバラに最適化されていく将来だ。この場合、市として必要な職員は数十人になるだろう。どの将来になるのか、誰もわからず、必要な市役所の姿も現時点で誰にもわからない。

そんなこと言いだしたら、市役所の更新などできない。いまのままほっといていいのか?と言われるかもしれない。そうではない。不確定な将来に対しても対応を最適化することはできる。私なら、スペースが余っているゆうゆうセンターに、本庁舎等の機能をできるだけ詰め込む。それでも足りない部分は、交野市内の民間の空きスペースを探す。新しい建物を建てるか考えるのは、その後である。

新庁舎建設に35億円は無理

第三に、市の財政がそれを許さない。交野市財政運営基本方針によると、庁舎を新設した場合の費用は35億円と試算されている。財源内訳は3.5億円が自主財源で、31.5億円が借金とされている。この他に補助金が入ってくると考えられるので、市の負担としてはこれより減るだろうが、補助金も税金には違いない。

現在の交野市の市債残高は300億円。それとは別に土地開発公社の借金が100億円あり、大阪府下の中でも借金が多い自治体として知られている。これらに加えて星田北・駅北の区画整理事業に市から30億円拠出するほか、年々社会保障費や老朽化したインフラ更新に多額の費用が見込まれている。この状況で、35億円を投じる新庁舎の建設など、できるはずがない。


以上の通りで、私は市が指し示す方向には全く賛成できない。このことは、直接市には申し上げています。あとは、市民の方の自由な議論を通じて、より良い方向に向かうことを願っています。私にご意見等ありましたら、市民の方でも市役所の方でも、どうぞ遠慮なくメール等でお願い申し上げます。

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